9月7日(日)の深夜NNNドキュメントでは、山形県米沢市の会員制居酒屋「結」で働く若者達にスポットをあてていました。居酒屋「結」はどういうお店なのでしょうか。
まずはお店を運営する代表の白石 祥和(しらいし よしかず)さんが紹介されています。
失敗しちゃダメな社会だから、失敗してもいいよという場所があって、会員の人が温かく見守ってくれるのであればと語ります。
社会に出るのに少し苦労してしまう人たちに寄り添うお店のようですね。そもそも白石さんとはどのような方なのでしょうか。
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会員制居酒屋「結」運営の代表白石 祥和(しらいし よしかず)さんとは?
氏名:白石 祥和(しらいし よしかず)
1981(昭和56)年 山形県米沢市生まれ
山形大学(教育学部)卒業
小学校臨時教員 フィリピンでの支援(ストリートチルドレン)活動
2007年フリースクール「With優」開設
2013年2月に会員制居酒屋「結」をオープン
CITIZEN OF THE YEAR 2015年度受賞アーカイブより
会員制居酒屋「結」運営の代表白石 祥和のこれまでの歩みとは
白石さんの活動の原点は、山形大学卒業後、消防士を目指していたようですが2年連続不合格で行き場を失い転職を繰り返します。やはりこのような人に寄り添う生き方をしている人は、決して順風満帆の人生を歩んでいるわけではないのですね。挫折を経験し自分が苦しい思いをしたからこそ人の痛みがわかる人生を歩むことになる。
24歳のときに転機がおとずれます。小学校の臨時教員に採用され、発達障害の子供達に向き合うことが、フリースクールの構想につながります。かならず節目でその後の人生に関係する出会いがまっていますね。自分の挫折と、困難な状況に置かれている子供との出会いが、そのような子供達をわがことのように何とかしてあげたいという気持ちにつながったのでしょう。
さらに、フィリピンでストリートチルドレンの支援活動も行い「教育の形は自由でいい」と学んだそうです。帰国後自分の考えをチラシにまとめ賛同者を得るために7,000か所を
訪問し賛同者を10名集めたようです。
ここまでの行動力には本当に頭が下がりますね。考えることならだれでもできるかもしれませんが、それを形にするまであきらめない行動力があったからこそ今日につながっているのでしょう。困難な状況におかれている若者たちを大勢救えるわけではありませんが、その人達の何人かでもなんとかしてあげたいと思う心が彼を突き動かしているのでしょう。殺伐とした現代社会において、このような支援の輪が少しでも広がることを祈りたいですね。
彼のたちあげた、フリースクール「With優」は、地元を中心に全県から若者を受け入れ、これまで50人以上が学び、現在でも、小学生から20歳まで20名程度が学んでいるようです。高卒資格取得や大学受験など各自の目標・進度に合わせ、きめ細かい個別学習を行う。さらに、農業体験、職場体験、ボランティア活動、地域イベント参加など、地域との交流活動も積極的に行う。彼らを金銭面からサポートする教育支援基金も2014年に創設しているようです。
ひとつひとつの課題を克服していきながら、一気にではないけれど少しずつ着実に前進しています。一歩進めるとかならず次にやるべきことが見えてきて、そのために問題解決のため全力を尽くします。
学ぶ場を提供できたが、次に問題となるのは就労だった。そこで、置賜若者サポートステーションを開設、就労支援を行うようになった。続いて、一般就労を目指す若者、社会に出たが実社会になじめなかった若者が職業訓練をする場所を提供したい、働くことを通じ地域の人たちとつながる場所を作りたいと、2013年2月に会員制居酒屋「結」をオープンしていくのですね。今回はそこで働く若者の何人かにスポットをあてています。簡単ではないけれど大変心温まる活動だと思います。社会の中で逃げ場がないので、今の状態を認めてくれるような、いつでも(戻って)来ていいんだよっていう場所を提供しているのですね。
そのような場所が地域の中にあってもいいのでないかと思い、効率的なことがすべてではないという場所はとても大切ですね。
世の中がすべて普通で、よく理解できる人達だけが生きているのではないということを理解しながら生きていくのと、そうでないのとではその後の人生は雲泥の差となりますよね。
会員制居酒屋「結」で働く若者たち、障害や引きこもり経験をかかえながら
2019年以前の店内が放映されています。コロナ禍が発生する前ですから、店内は大賑わいです。どのような若者達が、どのような位置づけで働いているのでしょうか。
社会へ出るための就労トレーニングという活動の場なのですね、障害や引きこもりの経験を抱えている若者達ですから当然いたらない点もあるわけですが、それを理解して入会料300円で会員になってもらうというのがいいですね。サービスが悪い、料理がでてくるのが遅いなどと文句を言うのでなく、温かく見守るという姿勢をお客さんの側に理解してもらうというのが実にいいですね。
吃音を克服して就職をめざす若者は、接客の際のビールを出す際に一言がなかなかだせませんが、もどろうとすると「いいぞいいぞもらうぞ」との声、会員に支えながら働く自身を身に着けていきます。
賛同してくれた地域の人たちの支援金は230万円、それにより手作りで居酒屋「結」を7年前2013年に立ち上げたのです。周りの人々の温かい協力がなければ成立しないですね。人はだれでもが一人で生きていけるわけではないということが実感されますね。
会員制居酒屋「結」で働く若者たち、大きく成長したムードメーカーの女性とは
トレードマークのタオルを頭に巻いて出勤、地元の出身の方です。接客と調理の両方できるのです。ホールだとお客さんの評判が、とても明るいのでいいそうです。ぱっと見た感じではどこにでもいるような普通の女性ですが、大変なことを抱えています。
中学生時代に不登校、不安な気持ちを抑えられなくなるとリストカットをしてしまいます。過呼吸の発作もあり仕事につけずにいたころ、「結」の存在を知り働き始めます。2016年3月店に来た当初は、人と目も合わせられず、取材カメラも避けているような状態でした。それが半年も過ぎた2016年11月にもなると、彼女の.笑い顔が店の看板となります。お客さんが壁のメニューを見ている目線で、次のオーダーもわかったりする気遣いができます。
すばらしいですね。
しかしその彼女には、自立への高いハードルがあるのです。母子家庭で育ち、母親や兄弟には持病があって働けず、家計を支えるのは祖父母の年金だけ、少しでも仕送りをして家計を支えないといけないとう厳しい境遇です。特に気がかりなのは幼いころから仲のよかった5歳上の姉は、全身にシミや腫瘍ができる神経線維腫症という難病のため、病状が悪化しているようです。代ってあげたいけど、自分がその立場になったらどうなんだろうと思います。
大変な人の気持に寄り添うのは大変やさしいことですが、いざ自分がその立場になったことを思うと想像できないほどの辛さがありますよね。
2017年4月、お給料の支給を兼ねた「結」のミーティングです。就労トレーニング中に貰えるのは月3万円ほどの謝礼金です。そこでは嬉しい知らせが、彼女を就労トレーニングでなく、5月から正規のアルバイト枠での採用となりました。またその前に紹介した吃音の青年も5月から介護施設での就労が決まり「結」を離れることとなります。
「結」で頑張って、社会へはばたく一歩を踏み出すことができるようになるのは大変嬉しいことですよね。「結」の存在が広く知られることとなり、そこを旅立つ人々が仕事先でも理解され、温かい対応をしてもらえることを願ってやみませんね。世の中はパワハラが問題になっていて、こういった弱い人たちにしわ寄せが行く可能性も高いわけですから、少しでも見守ってくれる人が増えるといいなと本当に思います。
会員制居酒屋「結」で働く若者たち、正規のアルバイトとなり一人暮らしを始めてみたものの、社会の現実とは
2017年10月に、正規のアルバイトとなりお給料もあがり、「結」の会員からアパートを格安で借り、一人暮らをはじめます。家電もいろいろもらって順調なスタートのようで、嬉しい限りですね。さらにその8か月後2018年6月に「結」を卒業することになり、米沢市内の飲食店に就職が決まったのです。
別れの挨拶では、過呼吸の発作だったり、急激に体がやばくなったりして、体調の面で問題を起こして、これでまただめだと思ったら、白石代表は、それでもいいからできる仕事だけやれと言うのです。そのことで自分を大切にしようと思うのですね。一人にならなくてよかったとしみじみ思います。
このような理解が、新しい職場でもなされるのでしょうか。想像しにくいことですね。ややもすれば自分より劣っている人を下に見て、いじめてしまう。最近の子供の虐待も、自分のことを棚にあげて、幼い力のない子供に暴力をふるうというのは同じような構造であるような気がします。弱い人達が守られるような世の中は成立しないのでしょうか。
5か月後彼女は心配したとおり、救急車で病院に担ぎ込まれます。2018年11月、入院を勧められますが、アパートに戻っていました。なるべくお金のかかることはしたくないと言います。わかりますよね。やはり就職先の飲食店で、「結」にいたときのように方言で接客すると、お客さんから言葉が汚いと言われてしまいます。心配したことが起こってしまいます。少しでも周りに理解をしてくれる人がいなかったのかと残念でなりません。
そのことで自信をなくし、2か月で仕事をやめて引きこもっていた彼女は、睡眠薬にも手を出してしまいます。頑張って自立したのに、2か月で仕事やめてしまったことで、「結」にもすぐにSOSを出せなかったというのも理解できますね。
とにかく自分を縛り付けていないとどこかへふらっと行ってしまいそうだと、自分が気おつけないといけないと思います。自分のことを他人事のように感じてしまい、結局、心療内科に通い、生活保護を受けることになります。あれだけ「結」で頑張っていたのに、現実の世界はとても厳しいというか冷たいですね。
2019年3月に新しく2人の若者が「結」を卒業し、就職するところに、彼女が呼ばれます。代表は2人に向かって、これから今まで以上にいい思い出を作って、生きていけることを心から祈っていますと大変あたたかい白石代表の言葉がかけられます。
2人のうち一人は、引きこもりしていましたが、2年間の就労トレーニングの後、ホテルの清掃の仕事に就くことになりました。最初は人と接することが苦手だったのに、少しずつ話でできようになっていたことを語ります。
白石さんは彼女に伝えたかった思いがあるのですね。「結」を卒業したときのあの頃の気持をもう一度思い出して欲しい。あたたかい思いですね。失敗したからといって終わりではない、何度でもやり直せるということを、直接言葉で伝えるのでなく、他の人の活動を示すことでつたえようとする姿勢は大変心があたたまりますね。
会員制居酒屋「結」で働く若者たち、また新しい若者がやってきます。
飲食店で働いていましたが、手際が悪いと厳しく注意され、働く自身をなくしていました。人との会話が苦手で、接客、ホールはできません。失敗が怖いと言います。
2019年9月にある催しを試みます。山登り12kmの道のりです。先の彼女も引きこもりがちでしたが白石代表に呼ばれます、この彼も参加し、誰かと話すことが目標です。彼女が遅れだすと代表が寄り添います。久しぶりの笑顔がみられます。彼も歩きながら会話も友達もできました。歩き始めて5時間みんなでゴールです。初めての企画なのでどうなるかと思ったが、来てくれるだけで嬉しかったと代表は語ります。彼女は来るって言わないと思っていたとのこと、それなりに思うところはあるのではとも。学歴にも職歴にも残らないが大切な思い出ができました。
代表の前向きな姿勢は本当にありがたいですね。強制的に何かをやらすのではなく、声をかけてみて、参加しないかもしれないけど、参加してくれるだけで嬉しいという言葉にその思いは凝縮されているのでしょう。ちょっとでもいいかなと思うことを、いろいろ考えてすぐに行動に移す、今までの経験がそうさせるのでしょうね。
その一月後、その彼は接客をはじめていました。みんながやさしい、自分でもできるのではないかと思う、最初感じていた不安がなくなったとのこと。
会員制居酒屋「結」で働く若者たち、ムードメーカーだった彼女を襲うさらなる厳しい現実
2020年8月彼女に悲しい出来事が起こります。難病を抱えていた姉がなくなってしまいます。なにがなんだかわからないくらい悲しいのに、心の奥に溜め込んでします。本当は大声で泣きたいのに、助けてくださいSOSを代表に送ると、そこに駆けつけた代表の姿が。
代表は彼女に寄り添い話を聞いています。彼女は姉が死にたくないなあという思いを書いたものを後で見つけます。それを見て自分は辛くても死にたいなあなんて言えないと言います。
その彼女はほどなく、最初に来たところに戻って、何かもう1回自分のこと見つけられないかなあと思って、「結」に顔をだします。
居場所があるのは大事ですね。失敗しても戻ってこられる、やり直せる場所があればまたもう一歩を踏み出すことができますよね。新型コロナ禍でお店の経営は厳しいものがあるかとは思いますが、早く終息し、このお店に集う若い人たちが、ゆっくりでも少しずつ前進しできることを願うばかりです。
嬉しいことに49人目の卒業生に、先の引きこもりがちだった彼も、介護施設の調理スタッフの仕事を見つけ、6か月の就労トレーニングを終え巣立っていきます。本当に現実の世界は厳しいとは思いますが、周りの人々は温かく見守って欲しいと思います。
彼は、白石代表や、周りのみんなが優しくしてくれて心的に救われたと言い、失敗してもいいんだなあ、また失敗したらここに戻ってやり直して、立ち直れると語ります。本当に心の底からの思いでしょうね。
会員制居酒屋「結」運営の代表白石 祥和の思いとは
自立を目指す若者への思いをつづった、居酒屋「結」の紹介冊子で、代表は書いています。就職をゴールにしているけど、本当のゴールは就職なんかじゃない。たった一度の人生を後悔しないように不器用でもいいから一生懸命に生き抜くこと、挑戦することが大切なんだと思っています。
失敗することを許すこと、それは挑戦することを許すことですね。